現在市販されている粉体塗料の種類と特性についてベース樹脂ごとにご説明します。 前述しましたが、粉体塗料は、熱硬化性樹脂をベースとするタイプと熱可塑性樹脂をベースとするタイプに大別できます。 一般に熱硬化性樹脂粉体塗料は静電塗装法で、熱可塑性樹脂粉体塗料は流動浸漬法で使用されるケースが多くなっています。 また最近では、フッ素系樹脂、無機粉末(ホーロー)等も使用されてきています。
ビスフェノールAのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂を使用した粉体塗料で、熱硬化性粉体塗料の中では最も歴史が古いものです。
静電粉体塗装法が開発されたことにより急速に実績を伸ばし、一般工業塗装関連分野のほぼ全分野で使用されています。特に、水道関連資材を主とする
重防食分野で実績を伸ばしているものです。また自動車関連では、塩害対策仕様を中心にボディ(プライマー)、パーツの粉体化が進んでいます。
硬化剤としては、一般に、ジシアンジアミド系(置換型、促進型)が使用されていますが、この他、酸無水物系、二塩基酸ジヒドラジット類なども
一部使用されています。最近では、硬化剤として末端にカルボキシル基を含有したポリエステル樹脂を使用した、
いわゆるエポキシポリエステルハイブリッド系粉体塗料が数多く使用されおり、汎用用途を中心にエポキシ系粉体塗料の中でメインになっています。
また、耐熱性、架橋密度を上げるために、クレゾールノボラックエポキシ樹脂をブレンド使用する例があり、電気絶縁、電子材料関連分野で実績をあげています。
アクリル樹脂系粉体塗料は、アクリル樹脂中の共重合モノマーの使用比率を変えることにより、種々の耐候性レベルの塗料を製造することが可能です。 従来アクリル樹脂は顔料とのぬれ特性が悪く、顔料添加量に制約があったために薄膜塗装系で隠蔽力が不足するという欠点がありましたが、 顔料分散性を改良した樹脂が開発されたことにより、上記欠点を克服することができました。 最近では、鉛筆硬度が3Hの塗料も作ることもできるようになり、耐スリ傷性が要求される用途への展開が期待されています。
ポリエステル樹脂系粉体塗料は熱可塑性タイプでしたが、耐食性が悪いという問題がありました。 その後塗料メーカーの技術開発によって耐候性、耐食性、耐汚染性のバランスのとれた熱硬化性タイプの製造が可能になり、 建材、家電用途を中心に需要が増えてきています。最近では、アクリル系に匹敵する耐汚染性を備えた塗料も作ることができ、 また、塗膜の可とう性に優れているので後加工が可能です。かつ、レベリング性が良好であるので薄膜使用ができます。更に、 高温短時間硬化も可能であり、コスト性能のバランスがとれているので今後の展開が期待される塗料です。
ポリエチレン樹脂は、粉体塗料の中で最も歴史が古いタイプです。粉体塗料の中では塗料単価が比較的安いために、 種々の用途で使用実績があります。熱可塑牲粉体塗料の中では最も使用実績が多くなっています。低密度ポリエチレンが主流ですが、 一部高密度ポリエチレンも使用されています。一般に耐候性が悪いため屋外用途に使用されることは少なく、線材の被覆が多く、家電製品、 自転車の付属品などの用途が主となっています。静電塗装法で使用されるケースは少なく、ほぼ全量が流動浸漬法で使用されています。 最近では自己密着型のポリエチレン系粉体塗料が開発されています。
粉体塗装用としてはナイロン11、ナイロン12の実績があります。静電用と流浸用がありますが、現在では流浸用の実績が多くなっています。
ナイロンは、非常に優れた性能を具備しているのですが、塗料単価が高いというコスト面の制約があり、ナイロンとしての機能を要求する用途、
例えば自動車部品、給水タンクパネルなど住宅設備、バルブなどを中心に実績があります。
最近では、耐熱水性の良いグレード、異種パウダーの混入に対するハジキ性を改良した品種が開発されています。
各ベース樹脂ごとの性能比較表
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